【注意】倉庫の“原状回復費用”の落とし穴とは?契約前に確認すべきポイント
賃貸倉庫の契約時に見落とされがちな項目のひとつが「原状回復費用」です。
契約満了時、想定以上の修繕費や撤去費を請求され、思わぬコスト負担が発生するケースが少なくありません。
特に、近年の倉庫は高天井・床荷重・空調・照明など設備仕様が多様化しており、
「どこまでがテナント負担か」を明確にしないまま契約すると、トラブルに発展するリスクが高まります。
本記事では、建設マネジメントの視点から、
倉庫の原状回復における費用構成・トラブル事例・契約前に確認すべきポイントを詳しく解説します。

1. 原状回復とは?法律上の定義と実務のズレ
「原状回復」とは、賃貸契約終了時に建物を借りた当時の状態に戻すことを指します。
しかし、実務上は「借主の使用による損耗・改造部分を元に戻す」という意味であり、
建物の経年劣化は含まれないのが原則です(国土交通省『原状回復ガイドライン』より)。
ただし倉庫の場合、次のような点でオフィスや住宅とは大きく異なります。
✅ 倉庫特有のポイント
床面のタイヤ跡・クラック補修
高天井照明・空調・シャッターなどの設備撤去
区画壁や中二階(中床)の撤去・補修
排水・防油槽の清掃・原状回復
このように、使用用途に応じて工事規模が大きくなる傾向にあります。
2. 原状回復費用の主な内訳
倉庫の原状回復費用は、一般的に以下の項目から構成されます。
| 費用項目 | 内容 | 費用の目安(参考) |
|---|---|---|
| 内装撤去費 | 事務所間仕切り・天井・床材の撤去 | 1㎡あたり3,000〜5,000円 |
| 床補修・再塗装 | タイヤ跡・亀裂・エポキシ塗装の補修 | 1㎡あたり4,000〜8,000円 |
| 設備撤去費 | 照明・空調・ラック・配線等の撤去 | 設備規模により数十万〜数百万円 |
| 外構修繕費 | トラックヤード・舗装・フェンス等 | 数十万〜数百万円 |
| 清掃・廃材処分費 | 建物全体の清掃・廃棄物処理 | 30〜80万円前後 |
📌 特に「床の補修費用」は見積もり差が大きく、見積条件を統一せずに比較すると誤差が数百万円単位に膨らむこともあります。
3. よくあるトラブル事例
事例①:退去時に高額請求(2倍以上)
入居時の状態を記録しておらず、「床補修・塗装一式」として想定の2倍超の費用を請求されたケース。
→ 対策:契約時に現況写真・設備図面を保存し、条件明示をしておく。
事例②:設備撤去範囲の認識違い
ラック・エアコン・防犯カメラなどを残置してよいと思っていたが、
貸主から「全撤去・配線処理までテナント負担」と指摘。
→ 対策:契約書に「残置許可設備」「撤去対象設備」を明記。
事例③:原状回復工事で近隣トラブル
撤去工事で騒音・粉塵が発生し、住宅地で苦情が相次いだ。
→ 対策:施工スケジュールと防音・防塵対策を事前に共有。
4. 契約前に必ず確認すべき5つのポイント
1️⃣ 契約書の「原状回復条項」を確認
→ “借主負担の範囲”が曖昧な表現になっていないか確認。
例:「現況に復す」ではなく、具体的な項目明記が必要。
2️⃣ 入居時の状態を記録(写真・動画)
→ 原状回復トラブルの約7割は「現況証拠の欠如」が原因。
3️⃣ 床・外構・設備の仕様書を保管
→ 改修・補修の範囲を明確にし、費用の妥当性を判断。
4️⃣ 撤去・再利用範囲を協議
→ 借主側が導入した設備(ラック・冷却機等)をどう扱うか、
契約時に明文化しておく。
5️⃣ 原状回復見積を複数社で比較
→ 建設マネジメント会社を通じて第三者見積を取るのが理想。
💡 契約前の段階で「想定コストの幅」を把握しておくことが、
トラブル防止の最大のポイントです。
5. 原状回復費用を抑える3つの実務テクニック
① 事前に貸主と“再利用協議”を行う
設備や床仕上げを次のテナントが使用できる場合、
撤去不要・費用免除になるケースがあります。
② 改修工事と同時に実施して効率化
老朽倉庫のリニューアルや再賃貸準備を兼ねて、
貸主側工事と共同発注すればコストをシェアできることも。
③ 専門の建設マネジメント会社に相談
設計・施工の双方に精通したCM会社なら、
過剰見積の検証+最適範囲の設定+交渉代行が可能です。
6. 契約交渉時のチェックリスト
| チェック項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 原状回復の定義 | 契約書に具体的範囲が記載されているか |
| 床仕上げ仕様 | 補修義務・塗装材の指定有無 |
| 設備の扱い | 撤去or残置が明記されているか |
| 外構・ヤード | 舗装補修・フェンス撤去の義務有無 |
| 写真・現況記録 | 着工前の状態をデータ保管しているか |
| 第三者見積 | 客観的な費用妥当性を確認したか |
“契約時の一行”が数百万円の差になる
倉庫の原状回復は、建物の性質・設備仕様・利用方法によって費用差が極めて大きい分野です。
契約時に確認を怠ると、
「想定外の高額費用」「貸主との交渉難航」「退去遅延」など、
企業にとって大きな損失につながります。
契約書の条項を明確に
現況を写真で残す
第三者の専門家に相談する
この3点を徹底することで、費用・時間・信頼関係のトラブルをすべて回避できます。
まとめ
倉庫建設のプロセスでは、各段階での効率的なコスト管理と品質確保が鍵となります。弊社のコンストラクション・マネジメント方式を通じ、コスト削減と高品質な倉庫建設を提供することを目指しています。倉庫建設に関するご相談は、ぜひお気軽にお問い合わせください。


