マルチテナント型倉庫の設計で注意すべき5つのポイント|複数テナント運用を成功させるために

EC需要の拡大とともに、**1棟の倉庫を複数の企業が共同利用する「マルチテナント型倉庫」**の建設が急増しています。
賃貸リスクを分散できるだけでなく、共用設備を効率的に活用できる点から、
不動産デベロッパーや物流企業を中心に注目が高まっています。
しかし、マルチテナント型は区画設計・設備共有・法規対応など、一般的な単独倉庫とは異なる注意点が多く、
設計段階での検討を誤ると「運用コストの増加」や「入居企業間トラブル」につながるリスクがあります。
本記事では、マルチテナント倉庫を計画・設計する際に押さえておくべき5つのポイントを、建設マネジメントの視点で解説します。
1. 区画設計:柔軟な分割と独立性の両立
マルチテナント倉庫では、1フロアを2〜4区画程度に分割して複数のテナントに貸与するケースが一般的です。
その際に重要なのは「柔軟なレイアウト変更」と「独立した動線確保」の両立です。
区画間の防火区画・耐火壁を明確に分ける
荷捌きヤード・搬入口・事務所スペースをテナントごとに独立させる
フォークリフトや人の動線が交錯しない配置計画を立てる
特に、将来的に1社借りから複数社利用へ転用する可能性も想定して、
間仕切りの位置や搬送動線を**可変式設計(モジュール化)**にしておくと、長期的な稼働効率が高まります。
2. 共用部設計:コストと利便性のバランスを取る
マルチテナント倉庫では、共用部(廊下・トイレ・休憩室・電気室・防災設備など)の設計が収益性を左右します。
共用部が多すぎると賃貸効率が下がり、少なすぎると利便性や安全性が損なわれるため、最適バランスが必要です。
共用廊下は幅2.5m以上を確保し、非常時の避難経路も兼ねる
トイレ・給湯室はテナント2区画に1セットを基本とし、給排水ルートを共有化
消防・防災設備(スプリンクラー・非常放送・煙感知器)は共用系統で統一
また、共用電気室や機械室の設計では、電力量メーターをテナントごとに分離しておくことで、
将来的なトラブルを防ぎ、契約管理も容易になります。
3. 設備仕様:テナントの業種に対応できる汎用性
マルチテナント型では、入居テナントが「製造業」「EC物流」「食品保管」など多様であるため、
設備仕様は“標準+拡張可能”な構成にすることが重要です。
床荷重:1.5〜2.0t/m²を標準とし、重荷物対応エリアは局所補強
天井高さ:5.5m以上を確保し、自動ラックや高所ピッキングにも対応
照度:300〜500lxを確保し、用途に応じて個別調光可能に
電力容量:各区画に200〜400Aを配分し、追加増設用のスペースを確保
さらに、冷暖房や防虫対策、セキュリティカメラなども、テナント仕様に合わせてゾーニング設定できるようにしておくとよいでしょう。
4. 法規・防災対応:用途変更・消防計画に注意
マルチテナント倉庫のリノベーションや新築設計では、
建築基準法・消防法・用途変更手続きに関する注意が欠かせません。
区画を分割する場合、**防火区画ごとの面積制限(1,500㎡以下)**を遵守
各テナントごとに避難経路・消火設備・非常照明を設置
倉庫業法に基づく登録手続きや構造基準を事前に確認
特に用途変更を伴うリノベーションでは、建築確認申請や開発許可が必要になるケースも多いため、
設計初期段階で自治体と協議を行うことが重要です。
5. 駐車場・ヤード計画:車両動線をテナント別に分離
複数テナントが同時に入出庫作業を行うマルチ倉庫では、
トラックヤードや駐車スペースの共用設計も運用トラブルを防ぐ鍵になります。
各テナントごとにトラックレーンと搬入口を明確に区分
乗用車・フォークリフト・トラックの動線分離を徹底
ピーク時間帯の入出庫を想定し、一時待機スペースを確保
夜間照明や監視カメラを配置し、安全性を高める
敷地に余裕がある場合は、ヤードの拡張性を確保しておくと将来の増車対応にも柔軟です。
「柔軟性」と「安全性」がマルチテナント倉庫設計の鍵
マルチテナント型倉庫は、単なる区画貸しではなく、**複数企業が共存する“共同インフラ”**です。
したがって、設計段階から「柔軟なレイアウト」「設備の汎用性」「安全・防災対応」を一体的に計画することが求められます。
また、テナント構成や賃貸条件の変化にも対応できるよう、長期的な運用視点での建設マネジメントが不可欠です。
まとめ
倉庫建設のプロセスでは、各段階での効率的なコスト管理と品質確保が鍵となります。弊社のコンストラクション・マネジメント方式を通じ、コスト削減と高品質な倉庫建設を提供することを目指しています。倉庫建設に関するご相談は、ぜひお気軽にお問い合わせください。


