【2026年最新】倉庫の荷待ち時間を短縮する方法|バース増設なしでできる運用改善と小規模改修を解説
物流倉庫では、トラックが施設へ到着してもすぐに荷役を開始できず、構内や周辺で長時間待機するケースがあります。荷待ち時間が長くなると、トラックドライバーの拘束時間が増えるだけでなく、運送会社の配車効率低下、物流コストの上昇、周辺道路の混雑、近隣からの苦情などにつながる可能性があります。荷主や倉庫運営者にとっても、取引条件や輸送能力に影響する課題であり、単に運送会社側の問題として扱うことはできません。
2025年度から施行された物流効率化法に基づく取り組みでは、荷待ち時間や荷役等時間の短縮が重要な項目として位置付けられています。物流効率化に関する基本的な方針では、1運行当たりの荷待ち時間と荷役等時間を合計2時間以内、1回の貨物受け渡し当たりでは合計1時間以内とすることが目標として示されています。ただし、これはすべての倉庫で直ちにバースを増設しなければならないという意味ではありません。
既存倉庫では敷地に余裕がなく、建物構造や接道条件の関係からバース増設が難しいケースも少なくありません。そのような場合でも、入出荷時間の分散、受付方法の変更、車両動線の整理、出荷商品の事前準備、荷役人員の配置見直しなどを組み合わせることで、現在のバース数を維持しながら荷待ち時間を短縮できる可能性があります。
本記事では、既存倉庫の荷待ち時間が発生する原因を整理したうえで、バースを増設せずに実施できる運用改善と小規模改修について、建築・物流計画の視点から解説します。

荷待ち時間と荷役等時間は分けて考える
荷待ち時間を改善する際には、まず「荷待ち時間」と「荷役等時間」を区別する必要があります。物流効率化法における荷待ち時間とは、トラックドライバーが集貨・配達を行う場所やその周辺へ到着した後、荷主や施設管理者などの都合によって、貨物の受け渡しを開始できずに待機した時間を指します。一方、荷役等時間とは、荷積み・荷卸しだけでなく、検品、仕分け、ラベル貼り、棚入れ、棚出し、荷造り、荷役への立会いなど、運転業務に付随する作業へドライバーが従事した時間を指します。
例えば、トラックが到着してからバースへ接車するまで1時間待ち、その後の荷卸しと検品に1時間かかった場合、単に「倉庫で2時間かかった」と捉えるのではなく、荷待ち時間と荷役等時間に分けて原因を確認する必要があります。荷待ち時間の原因が車両の時間集中にある場合と、荷役時間の原因が検品や手荷役にある場合とでは、必要な改善策が異なるためです。
バースを増設しても荷物の準備や検品に時間がかかっていれば、施設全体の処理能力は十分に向上しません。反対に、バース数が少なくても、到着時間を適切に分散し、接車後すぐに荷役を開始できる状態を整えれば、既存施設のまま処理台数を増やせる可能性があります。改善に着手する前に、車両の到着、受付、接車、荷役開始、荷役終了、退出の各時刻を記録し、どの工程で時間が発生しているのかを把握することが重要です。
平均台数ではなくピーク時間帯を確認する
荷待ちが発生する倉庫では、一日を通じて常にバースが不足しているとは限りません。午前中の納品時間や夕方の出荷時間など、特定の時間帯に車両が集中しているケースが多く見られます。一日当たりの入出荷台数だけを見ると余裕があるように見えても、1時間単位で確認するとバースの処理能力を上回っている場合があります。
そのため、現状分析では一日平均ではなく、30分または1時間ごとの到着台数、接車台数、荷役時間、待機車両数を確認します。併せて、大型車・中型車・小型車の構成、パレット荷役と手荷役の割合、入荷と出荷の比率、曜日や月ごとの繁閑差も把握する必要があります。
例えば、3台分のバースがある倉庫へ同じ時間帯に6台が到着し、それぞれの荷役に1時間かかる場合、後から到着した車両には構造的に待ち時間が発生します。このケースではバースを増やす前に、到着時間を前後へ分散できるか、荷役時間を短縮できるか、入荷と出荷の時間を分けられるかを検討します。
また、取引先ごとに「午前中必着」「朝一納品」といった条件が設定されている場合、それが本当に必要な条件なのかを確認することも重要です。長年の慣習によって設定された納品時間が、倉庫の混雑を生み出していることがあります。物流部門だけでなく、調達・販売・営業部門を含めて納品条件を見直すことで、建物を拡張せずに車両集中を緩和できる場合があります。
トラック予約受付システムは運用とセットで導入する
荷待ち時間を短縮する方法として、トラック予約受付システムの導入が検討されることがあります。事前に到着時間を予約してもらうことで、特定の時間帯への車両集中を避け、倉庫側も到着予定に合わせて人員や荷物を準備しやすくなります。
ただし、予約システムを導入するだけで荷待ちが解消されるとは限りません。予約した車両が時間通りに到着しても、バースが空いていない、荷物が準備できていない、予約なしの車両が優先されるといった運用では、システムに対する信頼が失われます。結果として利用率が上がらず、従来どおり早い時間から車両が並ぶ状態へ戻る可能性があります。
予約枠を設定する際には、バース数だけでなく、車種、貨物量、荷役方式、作業員数、フォークリフト台数を考慮する必要があります。パレット荷役とバラ積み荷役を同じ時間枠で扱うと、作業時間の差によって後続車両へ遅延が広がることがあります。そのため、荷役方式や貨物量に応じて予約枠の長さを変える、特定バースを予約車専用にする、到着遅延時の扱いを事前に定めるなど、現場の処理能力に合わせた制度設計が必要です。
受付についても、守衛所で紙に記入し、事務所へ書類を提出し、担当者の確認を待つという手順では、それ自体が渋滞の原因になります。車両番号の事前登録、タブレット受付、QRコード、呼出表示、SMS通知などを利用し、車両到着から接車指示までの手続きを簡素化することが有効です。既存倉庫では、受付システムの導入と併せて、受付機器用の電源・通信回線、車両が一時停止できるスペース、表示装置の位置などを確認します。
入荷と出荷の時間帯を分ける
入荷車両と出荷車両が同じバースを使用する倉庫では、両方のピークが重なることで荷待ちが発生しやすくなります。建物の増築が難しい場合には、入荷と出荷の時間帯を分け、同じバースを時間帯によって使い分ける方法が考えられます。
例えば、午前中を入荷中心、午後を出荷中心とする、または定期便とスポット便の受付時間を分けることで、バースの回転率を高められる可能性があります。ただし、時間帯を変更すると仕入先や運送会社の運行計画に影響するため、一方的に指定するのではなく、関係事業者と協議しながら進める必要があります。
倉庫側の作業シフトも併せて見直します。車両の到着を分散しても、荷役人員やフォークリフトが従来の時間帯にしか配置されていなければ処理できません。作業員の始業時間を分ける、入荷担当と出荷担当を時間帯に応じて再配置する、繁忙時間だけ応援人員を配置するなど、車両計画と人員計画を連動させることが重要です。
また、納品時間帯を広げる場合には、夜間・早朝の騒音や照明、近隣環境にも配慮する必要があります。住宅地に近い倉庫では、深夜のエンジン音やバックブザー、荷役音が問題となる可能性があるため、単に稼働時間を延長するだけではなく、防音、車両誘導、アイドリング管理も含めて検討します。
出荷前の仮置きスペースを見直す
トラックが接車しても出荷商品がそろっていなければ、バースが長時間占有されます。既存倉庫では保管効率を優先するあまり、出荷前の商品をまとめて置くスペースが不足しているケースがあります。その結果、トラックの到着後に倉庫内から商品を集め、検品し、荷姿を整えるため、荷役開始までの待ち時間と接車後の作業時間が長くなります。
バース増設を行わずに処理能力を高めるには、出荷予定の商品を事前に集約する「出荷前仮置きスペース」の確保が有効です。高回転商品や当日出荷商品をバースに近い位置へ移し、出荷先や便ごとに区画を分けておくことで、接車後すぐに積込みを開始しやすくなります。
新たな床面積を増やせない場合には、既存ラックの配置変更、低回転商品の移動、不要在庫の削減、空きスペースの集約によって仮置き区画を確保します。ただし、通路や避難経路、消防設備の前へ商品を仮置きすることはできません。作業効率を優先するあまり、防火区画、防火シャッター、屋内消火栓、避難口、フォークリフト通路を塞がないよう、建築・消防条件を確認したうえで区画を設定する必要があります。
床面に区画線や便名表示を設けるだけでも、商品の置き場所が明確になり、積み間違いや探す時間を減らせます。WMSと連携して出荷準備状況を可視化し、商品がそろった車両から呼び出す運用にすれば、バースを荷物の準備待ちに使用する状態を減らせます。
車両動線と待機場所を再編する
バース数が不足していなくても、敷地内の車両動線が複雑なために接車まで時間がかかるケースがあります。入場車両と退出車両が同じ狭い通路ですれ違う、待機車両が旋回スペースを塞ぐ、乗用車や歩行者と大型車の動線が交差するといった状態では、構内渋滞と事故リスクが高まります。
既存倉庫では大規模な造成を行わなくても、区画線、案内サイン、停止線、進行方向の変更によって動線を改善できる場合があります。可能であれば構内を一方通行化し、入場から受付、待機、接車、退出まで車両が後戻りしない流れをつくります。入口と出口を分けられない場合でも、時間帯による通行ルールや誘導員の配置によって交錯を減らすことができます。
待機場所は、単に空いているスペースを指定するのではなく、バースへ移動しやすく、他の車両の通行や旋回を妨げない位置に設けます。使用頻度の低い従業員駐車場や屋外保管場所の一部を再編し、待機レーンとして活用できる場合もあります。ただし、待機車両の重量に対して舗装強度が不足していると、沈下やわだち掘れが発生する可能性があるため、既存舗装の状態を確認する必要があります。
公道上の待機を前提とした運用は、交通障害や近隣トラブルにつながります。敷地内に待機場所を確保できない場合には、予約時間の厳格化、外部待機場の契約、近隣拠点との連携などを検討し、周辺道路へ車両が滞留しない仕組みを整えることが重要です。
荷役方法と検品作業を標準化する
荷待ち時間を短縮するには、バースへ接車した後の荷役時間も改善する必要があります。手荷役、荷姿のばらつき、納品書と現物の照合作業、商品の並べ替えなどが多い施設では、一台当たりの作業時間が長くなり、後続車両の待機につながります。
パレット、かご台車、ロールボックスなどの輸送用器具を活用し、荷役単位を標準化できれば、フォークリフトやハンドリフトによる一括荷役が可能になります。ただし、パレット化には積載効率、商品の寸法、取引先設備、回収方法などの検討が必要であり、倉庫側だけで決定できるものではありません。発荷主、着荷主、運送会社を含めて、荷姿やパレット規格を調整する必要があります。
検品についても、トラック到着後に初めて納品情報を確認するのではなく、事前出荷情報を受け取り、WMSへ登録しておくことで作業を短縮できる場合があります。バーコード、RFID、電子伝票などを活用すれば、紙の納品書との目視照合を減らせます。
また、契約上誰が荷役や検品を行うのかを明確にすることも重要です。ドライバーが本来想定されていない棚入れ、仕分け、ラベル貼りなどを行っている場合、それが荷役等時間の長期化につながります。作業内容と費用負担、必要人員を整理し、倉庫側で行うべき作業には適切な人員や設備を配置します。
フォークリフトと作業員の配置を到着予定に合わせる
車両が到着しても、フォークリフトや作業員が別の作業に使用されていれば荷役を開始できません。既存倉庫では、設備台数そのものよりも、配置と作業指示の問題によって待ち時間が発生していることがあります。
到着予定を事前に共有し、荷役開始時刻に合わせてフォークリフトと作業員を配置すれば、接車後の待機を減らせます。入荷担当、出荷担当、検品担当の役割を明確にし、繁忙時間帯には一時的に人員を集中させることが有効です。
一方で、フォークリフト台数を増やしても、走行通路が狭い、交差点が多い、商品配置が分散している場合には、構内混雑が増えてかえって作業効率が低下する可能性があります。設備を追加する前に、走行距離、交錯箇所、荷物の置き場所を見直し、現在の設備を有効に使えるレイアウトを検討することが重要です。
また、フォークリフトの充電場所や休止車両の置き場が主要通路に近い場合には、作業動線を塞ぐことがあります。充電設備や待機位置の移設は比較的小規模な改修で対応できる場合があり、通路の確保と荷役効率の改善につながります。
荷待ち時間の原因別・対策早見表
バース増設なしで実施できる改善策を選ぶ際の参考として、原因別の対策をまとめます。
| 主な原因 | 運用改善でできること | 小規模改修でできること |
|---|---|---|
| 車両の時間帯集中 | 予約受付導入・入出荷時間の分散・納品条件の見直し | 受付設備の移設・タブレット受付・呼出表示の設置 |
| 出荷商品の準備不足 | 事前仮置き運用・WMS連携による準備状況の可視化 | バース付近への仮置き区画の設置・床面区画線の整備 |
| 車両動線の複雑さ | 時間帯別通行ルール化・誘導員の配置 | 区画線・案内サインの引き直し・一方通行化 |
| 荷役時間が長い | 荷姿・パレット規格の標準化・人員配置の見直し | フォークリフト充電設備・待機場所の移設 |
| 受付手続きの遅れ | QRコード・事前登録・呼出ルールの整備 | 受付機器用電源・通信回線・一時停車スペースの確保 |
※上記はあくまで代表的な例です。実際の対策は施設条件・物量・荷役方法によって異なります。
バース増設なしで実施できる主な小規模改修
既存倉庫の荷待ち対策では、建物を増築しなくても次のような小規模改修が有効となる場合があります。
・構内道路の区画線を引き直し、一方通行化する
・待機レーンとバース進入レーンを分離する
・車両案内サイン、バース番号、停止位置を明確にする
・受付場所を移設し、入場時の停車時間を短縮する
・タブレット受付、呼出表示、車両認証設備を導入する
・出荷前仮置き区画をバース付近に確保する
・ラック配置を変更し、高回転商品をバース側へ移す
・フォークリフト充電設備や保管場所を移設する
・夜間や早朝の安全確保のため構内照明を改善する
・歩行者動線と車両動線を防護柵や床表示で分離する
これらの改修は、建物の増築に比べると工事範囲を抑えやすい一方、倉庫を稼働させながら施工する場合には、仮設動線、工事車両、設備停止、安全区画の検討が必要です。部分的な改善を個別に実施するのではなく、車両到着から退出までの全体の流れを確認したうえで優先順位を決めることが重要です。
改善後も継続して時間を計測する
荷待ち対策は、システムや設備を導入した時点で終了するものではありません。予約枠や入出荷量は、取扱商品の変更、取引先の増減、季節変動などによって変わります。導入時には効果があった運用でも、数年後には再び混雑が発生する可能性があります。
改善後も、車両ごとの到着時刻、受付時刻、接車時刻、荷役開始・終了時刻、退出時刻を継続的に計測し、時間帯別、取引先別、荷役方式別に分析します。平均時間だけでなく、長時間待機が発生した車両の割合や、特定曜日のピークも確認する必要があります。
また、荷待ち時間が短縮しても、荷役等時間が増えていれば、ドライバーの拘束時間全体は改善していません。車両回転率、バース稼働率、1時間当たりの処理量、荷役人員の残業時間、誤出荷件数、安全事故なども併せて確認し、効率化が別の問題を生んでいないかを評価します。
バース増設や移転を検討すべきケース
運用改善や小規模改修を行っても、既存倉庫の物理的制約によって十分な効果が得られない場合があります。例えば、すべての時間帯でバース稼働率が高い、敷地内に待機場所を確保できない、周辺道路が狭く大型車両の進入が難しい、床面積不足によって仮置きスペースを設けられないといったケースです。
また、事業拡大によって入出荷台数が継続的に増える予定がある場合には、現在の物量だけに合わせて改善しても、短期間で再び処理能力が不足する可能性があります。冷凍冷蔵化、自動倉庫導入、車両大型化など、将来の物流条件変更も考慮する必要があります。
このような場合には、バース増設、建物増築、隣接地取得、物流拠点の再配置、新倉庫への移転を含めて比較します。運用改善へ投資し続けるよりも、施設そのものを見直した方が長期的な費用対効果が高くなる場合もあります。既存施設の改善可能性と限界を客観的に評価することが重要です。
既存倉庫の荷待ち時間は、必ずしもバース数の不足だけによって発生するものではありません。車両到着時間の集中、受付手続き、出荷商品の準備不足、荷役人員やフォークリフトの配置、複雑な車両動線など、複数の原因が重なっているケースが多く見られます。
バースを増設せずに改善するためには、まず荷待ち時間と荷役等時間を分けて計測し、どの工程がボトルネックになっているかを把握することが重要です。そのうえで、予約受付、入出荷時間の分散、出荷前仮置き、荷姿の標準化、受付・車両動線の再編などを組み合わせます。
既存倉庫では大規模工事が難しい場合でも、区画線、サイン、受付設備、仮置き区画、ラック配置などの小規模な改修によって、現在の施設をより効率的に使用できる可能性があります。ただし、改善策を個別に導入するのではなく、車両到着から退出までの物流プロセス全体を確認し、建築・設備・システム・運用を一体として見直すことが必要です。
それでも物理的な処理能力が不足する場合には、バース増設や拠点移転を含めた中長期的な施設計画を検討します。倉庫の荷待ち対策は、単なる現場改善ではなく、輸送能力、物流コスト、取引先との関係、事業継続性に関わる経営課題として取り組むことが重要です。
【重要事項】
本記事は、既存倉庫における荷待ち時間の短縮と施設改善について、一般的な考え方を整理したものです。実際に有効となる対策は、敷地条件、バース数、入出荷台数、取扱貨物、荷役方法、周辺道路、契約条件等によって異なります。また、車両動線や待機場所の変更、設備移設等を行う際には、建築・消防・安全管理上の確認が必要となる場合があります。具体的な計画にあたっては、物流データを確認したうえで、物流、建築、設備、安全管理等の専門家へご相談ください。
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